バツ丸のエンタメ問答

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書評~これぞ真のミステリーなるぞ!!~その3

間隔があいて申し訳ないですが、12月6日の書評の続きを行います。


まず、驚くべきは出だし。

ここで、主人公石神が住んでいる場所に関する説明を行いつつ、彼がいかに頭の切れる人物であるかということを実にさりげなく表現している。

しかし、単なる説明的な描写と思いきや、実はここでの内容が後々にとてつもなく重要な意味を持つ。それはここでは記さない。是非自らの目でそれを確かめ、驚いてほしいと思う。

このオープニングを経て間髪居れずに滑らかに事件発生へとつながっていく。最近は、事件発生までにやたらと薀蓄をたれたり、もったいぶった文章を書いたりしてグタグタになっているゴミステリーがはびこりまくっている中、今作の話の展開は鍛えに鍛え上げられたボクサーの体のように無駄がなく鋭い。しかも、それだけでなく話もすさまじいことこの上ない。

通常のミステリーにおいては、「誰が殺したか」「どのようにして殺したか」「どのような理由で殺したか」をラストで明らかにすることが主題となる。しかし、この3つ、とくに最初の2つに項目に関しては、総じてはなから推理で導き出せるはずもない犯人設定や奇抜で非論理的な殺害方法ばかりとなっているのが現状だ。
だが、この作品においては、早々にこの3つに関して明らかにされる。拍子抜けするぐらいに。そこには大掛かりで悪魔的なトリックも何もない。殺し方も動機もすべてがごく常識的。そうであるが故に、事件の核心や警察の捜査のポイント、犯人と捜査する側との駆け引きポイント~つまりはミステリー作品としての核心となる部分が「殺害時間」「指紋」「遺体捜索」と、現実に生じた殺人事件において最も重要となるもののみに限定されている。これはとんでもないことだ。

料理で言えば、玉子焼きで玉子だけを使用して決定的な個性を出せと要求しているにも等しい。やろうとすること自体に相当な無理がある。だが、かつて、「殺害方法も時間も動機も分かっている。分からないのはどちらが殺したかということ」を主題とした「どちらかが彼女を殺した」や、「誰が殺したという点と、殺害に使用した薬のカプセルの残量」だけを謎にした「私が彼を殺した」で、ウルトラC級にも等しい「シンプルイズベスト」のミステリーを見せ付けたこの天才はこの難題を見事に処理しきった。だが、よくよく考えれば、殺人事件を突き詰めればすべてこの3つの項目にたどり着く。逆に言えば、そういったものを重要視していない今のミステリーが如何におかしいかということでもある。


石神が愛する真犯人をかばい、警察を欺くために天才的頭脳を駆使しこの3つの項目に対し罠をかける。石神に相対する警察官に関する描写も秀逸で、ミステリーのお約束ともなっている「バカで捜査や推理を探偵に依存しまくっているだけの警察官の姿」なんぞ微塵もない。警察の凄さ、狡猾さ、優秀さ、組織力の大きさといったものを読者にきちんと意識させた上で、そうであるが故に石神の仕掛けた罠に陥るという流れは、言葉に尽くせないほど秀逸。

そして、驚くべきことは、石神の取る行動すべてにきちんとした意味を持たせている点にある。どう考えても無駄にしか思えないような行動や言動に関してもそれが後々重要な意味を帯びてくる。冒頭の何気ない描写、また、事件後何故か石神が頻繁に真犯人に電話をする行為・・・。
そういった行為の裏にある真意が明らかにされたとき、もはやため息しか出なかった。
その見事さ、すばらしさは一種の芸術。この作品の主題の一つとして描かれている「数学の証明」のように精緻で美しく、無駄がないのである。

だが、今作で最も賞賛されるべき点は、石神が必死に築き上げ、警察すらだまし続けてきた精緻で完璧なトリックが破られる様の描写である。

彼のトリックを破ったのは、彼と対峙した天才湯川でも優秀な警察でもない。ではそれが何か。実はそこにこそ、今作の主題と今作を最高たらしめているものがある。それが何かということは、冒頭に書いた件と合わせ、自らの目で確かめていただきたい。


今の世の中、本当にゴミステリーであふれかえっている。だが、そんな作品らを「おもしろいもの」「最高のもの」として読んでいる人が多い。実に嘆かわしいことである。

真に最高のミステリーはここにある。如何に巷でもてはやされているミステリーがいんちきでつまらないものであるかを今作を読んで是非理解していただきたい。


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2005/12/17 00:12|読書評トラックバック:1コメント:3

コメント

はじめまして。鞍縞、と申します。『歌姫バカ一代』の頃からROM専門で、バツ丸さまのサイトを拝見していました。
バツ丸さまのレビューを見て、東野氏の小説にも最近手を出しました。一番最初に読んだのが、今朝ニュースでも報じられている、直木賞受賞の『容疑者Xの献身』です。
やはり、バツ丸さまのレビューどおり、傑作の名にふさわしい作品でした。『このミス』1位はさすがだな、と思った次第です。

余談ですが、最近私もブログを始めました。今はまだ自己満足の領域を出ませんが、近々読書やCDレビューもやってみたいと思います。そういうコンテンツが十分にできたら、このブログと相互リンクを貼ってみたいです。今、それが私の目標です(笑)。

では長くなりましたが、これで失礼いたします。
鞍縞 #-|2006/01/18(水) 08:39 [ 編集 ]


「容疑者Xの献身」は上質で完成度の高いミステリでしたし、管理人さんの解説も的確だと思いますが、

『今の世の中、本当にゴミステリーであふれかえっている。だが、そんな作品らを「おもしろいもの」「最高のもの」として読んでいる人が多い。実に嘆かわしいことである。』

これはどうかと思いますよ。
面白くミステリ読んでるその人達を馬鹿にしているみたいです。

映画業界に「B級ホラー」なんて言葉がありますよね。Aに劣るBなのにそれ程ネガティブなニュアンスではなくて、B級を好む人も沢山います。
そんな感じで「B級ミステリ」としてとらえ認めてはどうでしょうか?
B級人間 #-|2008/01/05(土) 11:01 [ 編集 ]


>B級人間さまへ

書き込みありがとうございます。ただ、

初めての投稿だと思われますので、最低限のマナーとして「はじめまして」の一言ぐらいはつけていただくようお願いします。


私は10年くらい書店で働いてきたのですが、ほんと、ゴミとしか思えない作品が溢れかえり、そういう作品が故に良作がうずもれるという嘆かわしい現実を見続けてきました。

あなた様はB級云々と書かれていらっしゃいますが、私も個人的にB級作品も読みますし、中には好きなものもあります。

しかし、常々このブログで言っていることは、そんなことではないです。

B級なんて言葉も使用したくない、そもそもの基本設定や論理構成が破綻した作品、泣かせの要素でしか読ませるものがない作品ばかり・・・。私が問題にしているのはこういう作品なのですよ。少なくとも自分が酷評してきた作品はB級云々といえる代物ではないと確信しています。その理由も明確に書いていると思いますし。

もちろん、個々人が何をどういう感想を以って読もうとそんなことそれぞれの勝手でしょうが、好みや思想関係なく、ある程度の質の判断をしてほしいと思いますね。

読者の質が低いから文学の質が低くなりますし、文学の質が低いから読者の質も低くなる・・・。

ま、言葉がきつくなりましたが、そもそも

>面白くミステリ読んでるその人達を馬鹿にしているみたいです。

とありますが、これは誤解がありますね。
面白いミステリを知らずに、単に業界のお仕着せでつまらない作品をさも業界最高峰のものとして読まされている現状を嘆いているわけで。


私はもっと面白い作品が他にもいっぱいあるよ、と申し上げたかったわけで・・・。

ま、最終的には人それぞれの意見として尊重してください。

よろしくお願いします。
バツ丸 #-|2008/01/05(土) 22:09 [ 編集 ]

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『容疑者Xの献身』レビュー
元夫を殺した母娘。その母に密かに想いを寄せる隣人、石神は天才的な頭脳を持ちつつも、高校の一数学教師に甘んじていた。そんな彼はその天才的な頭脳で、母娘が起こした事態を察知した。そして愛する隣人を救うために、『完全犯罪』を仕組もうとする。一見、優秀な警察たち
ひともんじゅ 2006/01/28(土) 14:28

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